会談記録(かえで視点)





 さあーて皆様ご注目ご注目!お客様方どうぞこちらをご覧くださいませぇー!

 ここに一人ぽつーんと立っておりますこのわたくし。ただの女に見えますでしょう?ちっちっ、それがね、ただの女じゃございません、そんじょそこらに転がってる女とはわけが違うんでございます。わたくしは二刀流を使いて、名だたる武将、名もない雑兵をザックザックと斬り殺し、『双刀の魔女』と呼ばれる女なのでございます。
 いずれの戦いでありましたか。とある霧の出た早朝での戦。わたくしは敵の首のやわらかい部分のみを狙い、頚動脈を断ち切っていったのでございます。敵の血が勢いよく空中にたちこめるものに降りかかり、あたり一面は赤い霧へと変貌したのでございました。その見事さ美しさは生き残ったものが長年に渡り語り継いでゆくことと相成りましょう。拍手、ハクシュー…

 パチパチパチ

 …ありがとうございます。
 さてその魔女がただいまおりますところは、なんと敵陣ど真ん中。中では敵の将が足を組んでふんぞり返っているであろう特設天幕のまん前なのでございます。皆々様、これからにご覧に供しまするは、この魔女が仲間14人の命と自分の命をひとくくりに纏めました上に、さあどうぞと敵に贈る約束をするという喜劇でございます。ご用とお急ぎでない方はどうぞ少しばかり足を留め、この喜劇をしっかと見てくださいませね。これは喜劇でございます。これから起こることは喜劇なのです。私の喜劇なのです。私の一生の締めくくりなのです。

 わたくしは死ぬ約束をしにまいりました。私は殺されるためにまいりました。私は騙されるためにまいりました。私は信じるためにまいりました。私は愛する人に会いにまいりました。私は恋する人に会いにまいりました。私は幸せです。私はとても幸せです。幸せです。

 私は特設天幕の入り口に立ち、中の様子をうかがいました。この中に愛する人がいるのです。天幕の入り口がすうとほとんど音もなく開きました。これは入っていいということでしょう。中には愛しい人が正装で立っておりました。

 ――少し、痩せたね、兄様。

 兄の正装を初めて見たのでございます。黒の生地に、決して華美ではない銀の刺繍と軍人の階級を示す何かの印。まったく…敵ながら惚れ惚れとする男ぶり。なんて憎らしい人でしょう。
 天幕の中にはもう一人、この話し合いを記録するための書記さんが座っておりました。これは会談。同盟軍代表のわたくし、王国軍代表の兄、二人の会談ではありますが、この者のいることはまあ仕方ないといたしましょ。
 しかしまぁ兄様と違って青白い顔だこと。……ああ、なんだ私の姿を見て驚いてるのか。今日は精一杯のおしゃれをしてきたのよ?自慢の長い黒髪を、油で丁寧に丁寧に梳いて、薄ぅくおしろいをして、紅を引いて、大好きな赤い衣装に黄色の首巻をして…香水を胸にひと吹き…。
 けれど、右目の眼帯と左足の義足はあえてむき出しになるような衣装を選んでまいったのです。帽子も、義足を隠すものも、いるものか!しかし愛用の双刀だけは念のためにと仲間に持たされてしまっておりました。これもまた仕方の無いことでございましょう。

 兄は私の姿を見ても、表情を変えませなんだ。もう私が目と足を片方ずつなくしていたことを聞いておられたのでしょうか。兄様、私はもうこんなだから、子供達のところへ帰れないの。私はもうこんなふうだから。私は鬼だから。私は魔女だから。私はもうかえれないの。兄様。私ね、もうね。もうね。


 10時になり、対面する形で私たちは着席いたしました。

 
 パンパンパン!さあーあ喜劇の始まりだ!!本番だ!!実の兄妹が本格的に殺し合う、底抜けに可笑しい喜劇の始まりだ!!リハーサル無しの一発勝負!!台本もなく、演出もない。照明はランプ。効果音は小さな窓から吹き込んでくる風の起こす、かすかな音のみ。大道具はこの天幕。小道具は椅子とテーブルと紅茶。役者は私と兄様、黒子は書記さんでございます。
 ただ一人の裏方さん、絶対に、一言も書き漏らすなよ。この喜劇の一切を書き取れよ。後世に残せ!!この馬鹿馬鹿しい喜劇を最初の一言から最後の一言まで、一切を漏らさず書き残せ!!

 「では話し合いを始めてよろしいでしょうか」

 兄は私の目を見ておりました。私の目を。いまさらになってこの私の目を!なんという喜劇。しかし表情が読み取れません。私はどう返したらよいものでしょう。台本は無いのです。しかし私はこうして対面できた喜びを隠しきれず「はいっ」と元気よく答えてしまったのでした。
 私は元気。ねぇ、兄様、私は元気。私は幸せです。

 「今回の会談の提案を受け入れていただき感謝いたします…」

 私が浮かれているのを悟られたのだろうか、少々睨まれてしまいました。
 あっははは。喜劇だ!これでこそ喜劇だ!あっははははは。私も真面目にならなくちゃね。真面目くさって答えてさしあげましょうじゃないですか?実の兄と妹がなにやってんだろう。ねぇーえ?あっははははははははは。

 「はい」

 けどね、本当に嬉しいの、私は嬉しいの。こうして兄様に会えたこと。兄様の声が聞けること。話ができること。昨夜は会談の提案書を抱いて眠ったよ。幸せだったなぁ……。
 さてと、まずは先手必勝。こちらの意見をばしっと言っておかなくてはなりません。私は代表よ?代表。仲間14人の命を預かっている身分であります。みんな、大事な命を私に預けてくれたのです。ありがとうね。私たちの話し合いは、一つの異議もなく、まっすぐに一つの結論にまとまったね。それを最初にね、どんとつきつけてやんなきゃね。

 「ただし、一つだけ先に申し上げておきたいことがあります。よろしいでしょうか」

 兄の表情が曇りました。

 「どうぞ」

 私はまずすっくと立ち上がり、一の剣を抜き、テーブルに突き刺して見せました。

 「まず!私どもに降伏の意思は無いということです!」

 そして次に二の剣を抜き、一の剣と交差するように、テーブルに突き刺しました。

 「私を含めた残りの同盟軍15名、全員の一致した意見であります!それだけをお伝えしに、本日は参りました!」

 これが私たちの意志でありました。レジスタンス活動から始まり、革命軍と合わさって同盟軍となり、仲間が死んでゆくのを泣きながら耐え、とうとうたった15人になってしまった、私たち全員の一致した意見でございました。
 私の挑発的で、あまりに無礼な行動を目にし、さすがに兄は立ち上がりました。
 いいぞいいぞ。怒れ!!怒ってみろ!!この場で私を殺してみろ!!

 「……これまで三度送った使者への対応から、今回は降伏してくださるものだとばかり思っていましたが…」

 兄様が睨んでいる。この私を!!あはははははは!これまでまともに見ようとしなかったこの私の目を!!
 そうだよ。私たちは三度、使者を首にしてそちらに返したね。
 もっと睨ませてやりたい。この一つだけ残った私の目玉を。睨め!!もっと睨め!!

 「これが最後だからです」

 兄は、私から眼をそらさないままテーブルを回って近づいてまいりました。けれど、私は意地悪く正面を向いたまま。かつて貴方が私にしたように、あえて壁に向かってしゃべり続けてやるのです。貴方は私の目を、見ようとしなかったではないか。見てなんかやるものか。

 「おそらく近いうちに私どもは全滅するでしょう」

 あと何歩でしょうか?ずいぶんとゆっくり、ゆっくり近づいて来られるのですね。
 これはもっと挑発してやらなくちゃね。
 そら、私の目を見る勇気があるか?私の目に、この片目にあなたの怒りの表情を焼き付けてみせろ!!私は無残に死にに来たんだ!愚かに騙されに来たんだ!絶対に信じるために来たんだ!!私は!!あなたに殺されるために来たんだ!!

 「あなた方の攻撃によって死ぬでしょう!」
 「おそらくはそうなるでしょう…」

 兄は私の顔を両手でつかみ、無理やり自分のほうへ向けました。目が合ってしまいました。
 兄の目のふちは赤くなっておりました。

 「だからこそ私たちは何度も降伏を勧めてきたのです!」

 兄が叫ぶように私に言いました。耳が痛いくらいに。けれど、兄様…目が…。

 「あなたがたは、このような内乱で無駄に使い果たすべき人材ではないと!こちらは判断していました!」

 叫び続ける兄の目から、涙がぼたぼた流れ出しました。

 「今からでも降伏していただければ!それなりの地位も約束しましょう!」

 私の顔をつかんでおりました両手は肩へと移動し、私をガクガクと揺さぶりだしました。怖いくらいに睨みつけているのに、その目からは涙が止まりません。語尾は震えています。こんな兄様は初めて見ました。
 はは…はははははは。喜劇だね。実の兄妹なのにね。
 まだ私の知らない兄様があった。嬉しいな…。嬉しいなぁ…。
 
 死ぬ前に、そんな新しい一面を知れて、嬉しいなぁ…。
 けれどね、まだ見たいの。まだ知りたいの。私はね。そのために来たんだから、そら、言ってやる。

 「先ほど申し上げたとおり、私どもに降伏の意思はありません」

 手の動きは止まり、兄はうなだれてしまいました。ぐっ…と何かをこらえるような声が、聞こえたような気がいたしました。ポッ、ポッ…という音も聞こえます。じゅうたんに何かがしたたり落ちるような音でございました。それ以外は何も聞こえません。聞こえません。
 少しの時間が流れました。わずかに窓から、細く細く風が吹き込んでくるようです。とてもいい舞台ですね、兄様。幸せです。私は幸せです。
 テーブルに刺した双刀がぬらぬらと光っていました。つい、キレイだなぁと見惚れてしまいます。どのくらいそうしていたんだっけ?なんの話をしていたんだっけ…?どうして兄様、私の肩に手を置いてるの?ああ…そうだ。言ってやらなくちゃ。言ってやらなくちゃ。喜劇、これは喜劇。続けて!!

 「たとえ生き延びて、王国軍に籍を置く身となったとしても、私たちはあなたたちのお仲間をたくさん殺してきたのです。どんな待遇が用意されていたとしても、あなたたちは心からは受け入れてはくださらないでしょう」

 兄様、ねぇ…兄様。私ね、あなたの友達かもしれない人をたくさん殺してきたよ。あなたと同じ訓練を受けてきたかもしれない人たちを、たくさん殺してきたよ。
 ハルニスの家にいたころ、あなたはよく子供達に剣の稽古をつけてくださいましたね。私ね、ちゃんと見てたんだよ。視線の動き、体の動き、剣の使い方。子供達は楽しそうでした。素敵な思い出です。
 私が殺してきた中に、兄様と同じくらいの年の人がたくさんおりました。兄様の友達かもしれないと思いながら、頚動脈を斬ったの。斬って斬って、殺してきたの。私に向かってきた人たち。剣を向けてきた人たち。みんな私が殺したの。ああ、兄様と同じような稽古をしてきた人たちなんだろうな、と思いながら。

 だってその人たちね、太刀筋が悲しいほどあなたとよく似ていた。

 「私たちは印の子であり、異端なのです。もう耐えたくはありません」

 わたしは、印の子です。
 わたしは、異端です。
 わたしは、鬼です。
 わたしは、元気です。
 わたしは、幸せです。

 「いいや…耐えていただく…!あなたがたの力は惜しい…」

 わたしは、もう、ハルニスの家には、帰れません。
 わたしは、この国が、きらいです。
 
 「この国にとって大きな力となるでしょう!そう…思えばこそ…何度も使者を送ったのです…」

 わたしは、もう、ながくは、生きられません。
 わたしは、もう、こんなだから。
 わたしは、もう、死ぬから。
 わたしは、元気です。
 わたしは、幸せです。
 わたしは、兄様に会えて幸せです。
 わたしは、兄様を愛せて幸せです。

 兄様はよろよろと、私から手を離してへたりこんでしまいました。つまらない。私が降伏しに来たと思っていらしたんですね。けれど、もう無理なんです。私はね、14人の仲間の命を預かってきたんです。私はね、代表なんです。

 「大変ありがたく思います。しかし私どもの意志は変わりません。その心を伝えるために私はこの場へ来ました」

 兄にハンカチを渡そうといたしました。けれど、叩き落とされてしまいました。拒まれた。
 ははは、喜劇。おかしいね。おかしいねぇ。この人に拒まれるのは初めてじゃないよ?ずーっとずーっと避けられてきたもの。これくらい平気。私は、幸せ。

 「敵として対峙しながら、私たちの力を評価していただき、このような会談の場を設けていただいたことに、感謝してもしきれません」

 ハンカチを拾い上げながら、そう申し上げました。本当だよ、兄様。何度も何度も使者を送ってくれて、とうとう今回は貴方自身が筆をとってくださった。嬉しかったよ。とてもとても嬉しかったよ。あんまり嬉しくて、貴方の字で書かれてる書状を抱いて眠ったんですよ。私は幸せです。

 「この会談を提案してくださったのはどなたですか?」
 「私です…」

 あはは、やっぱり。大げさに驚いてみせてやる。どんな顔するかな。

 「竜騎士隊の隊長殿自らのお誘いだったとは!本当に光栄に思います!」

 兄はうつむいているので、表情が見えません。
 これは挑発してやらなければ。私もかがんで、兄の顔を覗き込むようにして言ってやりました。

 「次の攻撃はいつでしょうかー?」

 その瞬間、兄は鬼の形相で立ち上がり、私の胸倉をつかんで頬を平手打ちしました。体と耳に衝撃が走り、何も考えられないうちに床に叩きつけられるように倒れました。ついでに椅子も倒れてしまいました。一瞬遅れて左頬がビリビリと痛みます。口の中に血の味も……しかし、やっとこの人は怒りを見せてくれた……。
 私は床に倒れたまま、顔を兄のほうへ向けました。そしてその表情を見ることができました!
 あははは…はは…。この顔、この顔が見たかったんだ!!
 左目に焼き付けてやる、この怒りの表情!!


 あなたは私がレジスタンスに加担していることを知りながら、怒ってくれなかった!!止めもしなければ協力もしてくれなかった!!無視した!!黙殺した!!そして…そして、冷たく「血にまみれた女は好かん」と、私の全部を否定した!!私の全部を!!あなたを想う私の気持ちの全部を!!


 ざまあみろ!!冷静なフリをしても、それがあなたの本性だ!!
 やっと引きずり出せた!!それが見たかった!!それが見たかった!!!
 ざまあみろ!!
 ざまあみろ!!
 私は忘れない!!
 その顔を忘れない!!
 私は、その顔が見たかった!!そのためにここへ来た!!


 ………。


 それが、見たかった。生身のあなたが見たかった。
 あなたの生きた感情を知りたかった。あなたの本音に触れたかった。
 嬉しい。はは…あはは……。喜劇は笑いで終わらなくちゃね。ははは……。
 

 「明朝9時とします」


 冷ややかな声が頭上から聞こえました。ああ、立ち上がらなくちゃ。

 「では明日、私は死ぬでしょう」

 テーブルに刺した二振りの剣を、鞘に戻しました。そして、せっかくだから紅茶をいただきました。口の中の血を洗い流して飲み込みました。……少し待ってみたけれど、毒入りですらございませんでした。ああ、馬鹿馬鹿しい。せっかく騙されに来たというのに、あなたの全てを信じるために来たのに、毒の一つも盛ってくださいませんの?ここは敵として何かしら仕込むべき箇所でしょうが。演出がなっておりませんわね。ここで騙してくだされば、より一層わたくしの信頼が増す場面となりますものを。

 「みなにも伝えてよろしいでしょうか?」

 にっこりと微笑む私を、兄はもう見ようともなさいませんでした。

 「私に止める権利はありません。それをわかっていて、まだお考えは変わりませんか?」

 涙声と、笑い声が混じったような声でした。笑ってる。泣いてる。あはは。そうだよ。喜劇は笑いで終わるんだからね。素人のわりに上出来よ、兄様。あはは。

 「変わりませーん。最後に、この会談を設けてくださったあなたさまのご幸福をお祈りします。本当に感謝しています。それでは失礼いたします」

 私は倒れた椅子を直し、一礼してから天幕を去りました。帰り際には奇襲の一つも無し。ああ、拍子抜け。幕の外に何十人かが待機していて、一斉に私に攻撃してくるとか、そのような一幕もなく。つまらないような子供じみた気持ちで帰路に着きました。


 こうして『双刀の魔女』は同胞と自らの命を敵将に渡す約束を結んだのでありました。
 やはり人の命を奪い続けた魔女、目足をもがれた女に、生きるすべは他に残されていなかったのでしょう。当然至極、極めて自然なこの結末。大笑いでございましょう?同じ胎から生まれた実の兄妹が敵同士となり、手心ナシの殺し合いとは!
 
 さてこの喜劇の後、わたくしはまたしばらくの間、一人でぽつーんと立っておりました。何の考えがあったわけではございません。ただ、この世で最も愛する人の、あの怒りの表情を何度も何度も思い出しながら、歌を歌っておりました。そうそう、わたくしは『双刀の魔女』と呼ばれておりますが、もう一つ『赤い霧のセイレン』という呼ばれ方もあったのです。
 赤い霧を作り出したあの早朝の戦で、わたくしは歌を歌っておりました。このような戦いに身を投じるまでは、ただの歌うたいでありましたので、戦場においても歌を忘れることはできないのでした。戦場で歌うのは子守唄であります。一つ、動脈を斬っては「おやすみなさい」。もう一つ動脈を斬っては「おやすみなさい」。せめて苦しまずに死ねるようにとの、まあ、わたくしなりのおまじないのようなものでございました。
 セイレンというのは、たしか歌声で船を呼び寄せては食い殺す怪物のことで、まったくわたくしにぴったりではありませんか。

 わたくしは兄を愛しておりました。仲間の元へと帰った後も、歌を歌い続けました。『つぐみの歌』というお気に入りの歌を繰り返し繰り返し、歌っておりました。これはわたくしの師匠が作ってくださった歌なのです。幼い時、わたくしがあまりにはなればなれになった兄を恋しがるので、このような歌を作ってくださいました。遠くにいる兄に届くように歌えと言われました。


 つぐみが海を渡ります

 つぐみさん、つぐみさん
 そこから何が見えますか

 森の木々が大地に根を張り
 空を見つめているのが見えますか

 大きな泉がきれいな水をたたえ
 流れる雲を映しているのが見えますか

 帰る日が来ないので
 わたしはまだ飛びません

 わたしのこころを半分預けた人を
 もしも見つけることができたら
 伝えてください
 
 わたしはここにいます
 わたしはここにいます
 わたしはここにいます

 元気です


 そうです。わたくしは元気なのです。生きるのが終わるまでずっとずっと元気なのです。
 わたくしはここにいます、兄様。元気です。最期まで元気です。あなたを愛せて幸せです。
 私は、幸せです。

 最後までお付き合いくださったお客様、ありがとうございました。この場にはおりませんが、もう一人の役者であった兄とともに、お礼を申し上げます。機会がございましたらば、またのご来場をお待ちしております。
 明日のわたくしの戦い、一世一代の名舞台とあい成りましょう。締めくくりは当然、わたくしの死。わたくしはいったいどのような死に方をするのでございましょうか。またもや喜劇?そう、喜劇がいいわ。今日のような喜劇が!ああ、楽しみだ!!明日が楽しみだ!!

 …本日はこれにて、幕。